火の国に咲いた花たち
―現代美人画を描く門田奈々
竹久夢二の平面作品は、上海の丰子恺(中国読み:フォンチーカイ)に影響を与えた事で有名である。デザインと装丁の世界で大きく進化を遂げたのは、控え目な美人画とデザインがバランス良く配置され、日本のデザイン史の中でも看過できない重要な創造者である。
日本の美人画の世界には、伊東深水、鏑木清方、上村松園を思い浮かべる人が多いかもしれない。国立新美術館では没後50年鏑木清方展を開催している。《新富町》《浜町河岸》(2作とも1930年)《築地明石町》(1927年)の三部作を含め、109件の日本画構成による大型美術館においての個展である。
では、門田奈々の人物画は美人画なのか?彼女の作品は控えめに見えて凛々しい頑とした拘りを内に秘めている現代美人画と言える。ただ、構図からして伝統的な間を置いているが、背景に花鳥風月が来るような古典表現ではない。長い首に、強い意思の眼ちから、華やかな花が頭の回りを巡る構図。熊本に移ってから、火の国の明るい自然により、この画風が形成されたと彼女は自述するが、現代女性の脆弱そうで、強い生命力と生存パワーを赤裸々に表現している。
門田とは、10年以上前に上海でアーテイスト・グループC-DEPOのグループ展でご縁があった。今年の春にコラムの取材に出掛けた熊本でも再会、縁が再度繋がった。上海スペースの個展を提案したが、3月になって上海が怪しい動きになり、画廊も3月16日から休業を余儀なくされ、急遽東京スペースの個展に切り替えて開催する運びになった。
上海の4月1日からの全面的なロックダウン。いつになったら解除されるか定かではない。一人でも陽性の人がいたらそのアパート全体が隔離病院に連れていかれる理不尽さは、到底理解できない。
門田作品の凛とした女性像。その中でどんなパワーを感じるか、初夏の東京で一春を失った上海を偲ぶ。その凛とした作品群に私は癒しを感じた。