
「愛、生命・そして縄文」は、遊真Mu篤子とイノウエ賢一による初の二人展です。本展は、古代の記憶と現代の感性、内的な祈りと外界へのまなざしを往還しながら、「人間とは何か」「生きるとはどういうことか」といった根源的な問いを、現代美術という媒介を通じて掘り下げる試みです。遊真Mu篤子の絵画、マルチメディア・インスタレーションとイノウエ賢一の平面作品32点を展示いたします。
ニューヨークと日本を拠点に活動する遊真Muは、「母性」「再生」「スピリチュアルな愛」といった主題を中心に、絵画、インスタレーション、パフォーマンスを横断する表現を展開してきました。彼女の作品は、女性的な身体感覚や自然への信仰と結びつき、観る者の内面に静かな震えを呼び起こします。日本の文字文化に根ざしたイノウエの作品は、漢字・ひらがな・カタカナといった文字を再構成し、意味が溶解する瞬間に現れる「未定義の可能性」を絵画として表現するものである。杉板の木目を支持体とした画面には、文字とも象徴ともつかぬ“痕跡”が浮かび上がり、日本人の深層的な記憶を静かに喚起します。
「縄文」という言葉は、かつて存在した文化であると同時に、私たちの身体の奥底に眠る“忘れられない記憶”でもある。遊真Muは母性の原像を描き、イノウエは文字の深層を掘り下げ、それぞれ自身と重ね合わせて作品を創出します。
本展において、二人の異なるアプローチは交錯し、愛と生命にまつわる太古からのメッセージが響き合います。ぜひご高覧ください。