井上 賢一 Kenichi Inoue
1958年 大分県生まれ
1982年 創形美術学校版画科卒業
画歴・個展
1984年~2023年
ギャラリー檜、ギャラリーシアカ、真木田村画廊、
ギャラリーサージ、スタジオ4F、等々
グループ展
1988、1989年 大谷地下美術展
1990年 TWO WEEKS IN THE SPRING(館山海岸)
1991~1994年 名栗湖野外美術展
2016〜2025年 21世紀美術連立展
2016年 エロスの饗宴展(ギャラリー檜)
2017年 開かれた孤独展(ギャラリー檜)
2018年 自由を生む中庸展(ギャラリー檜)
2021年 本とアートの対話展(ギャラリー檜)
2022年 動物を見る展(ギャラリー檜)
2023年 自我像展(ギャラリー檜)
2024年 本とアートの対話展(ギャラリー檜)
日本の文字と私
イノウエ 賢一
人は、長い歴史の中で、厳しい大自然の中から生きのびるために、文字という武器を発明した。
それは、情報の交換として、さまざまな場面で使用される。
新しい技術を後の世代に引き継いだり、敵の正確な位置を味方に知ら示めたり、さまざまな物語を文字によって語らせ、新たな娯楽を作る。
そんな文字という物に、私は多大な関心がある。
私の作品は、日本という国の中で、日常的に使われている、漢字、ひらがな、カタカナ等など、身近な生活の中から生まれた文字からインスピレーションを受けている。
表意文字である漢字を分解したり、表音文字であるひらがなや、カタカナを崩し、当初の持っている意味を、曖昧にする事で、新たな可能性、新たな発見を目指している。
一つ一つの文字には、意味があり、二つ、三つと繋ぐことで、新たな意味が生まれ、何重にも重ねる事で壮大なストーリーが生まれる。従来は、本という形になるが、私は、それを絵画という形で作ってみたい。
日本には、絵巻物という物があるが、長大な紙面に絵と文字を交互に組み合わせ、物語や、時の事件を記録する。
私は、私なりの絵巻物を現代美術という形で表現したい。
素材は、ここ数年、杉を使っている。杉の木目には日本古来の伝統的な文化が潜んでいるからだ。
木目には、不思議な魅力がある。
漢字のような、ひらがなのような、あるいは、そこに潜んでいる怪異。 木材建築が主流の日本の家屋は、あたりまえのように、流れるような木目が、昔から生活の中に存在していた。
そんな杉板を使って木目を浮き上がらせ、新たな文字を創造し、新たな絵巻物を作りたい。